第12回小田高自然環境フォーラム開催 「自然環境と私たち—体験から得たもの—」

第12回小田高自然環境フォーラム
「自然環境と私たち—体験から得たもの—」
日時:令和4年6月26日(日) 13:00〜17:00
場所:県立小田原高等学校2F 集成館ホール
入場無料
■希少種剥製標本公開
場所;3階 生物教材室
時間:12:00〜13:00
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- 令和元年(2019)の第10回小田高自然環境フォーラム ミゴトに開花しました (2019/07/10)
- 第9回小田高自然環境フォーラム,反町校長先生のネパール報告などで大盛り上がりでした(詳報は別項でご覧ください) (2018/04/23)
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令和元年(2019)の第10回小田高自然環境フォーラム ミゴトに開花しました
多彩な講師陣、多彩な講演内容、満足しましたか
小田高同窓会の目玉活動のひとつ「自然環境フォーラム」が10回目を迎えた。令和元年6月16日、母校小田高の集成館ホールで、表題「野生の世界と私たち」で開催された。その紹介です。(併せて小田高同窓会報「八幡山」第31号にも掲載されています)

会場風景

講師の皆さん
■「毎日が楽しくなる!自然観察のススメ」
最初に登壇した講師は、相模原市立博物館・学芸員の秋山幸也さん(小田高39回生)。相模原市内の北里大学で非常勤講師も務める。秋山さんは「わたしは、毎日の暮らしも、趣味でも、すべてが自然観察の世界にいる」と自己紹介した。
【擬態の動物を観察する】
壇上のスクリーンに桑の木が投影された。「この画面にクワコという昆虫がいます。判りますか」。枝と葉。そのどこに?ざわつく会場。秋山さんは画面を拡大した。枝の一部と見えたのが幼虫だ。「これがクワコの擬態です。自然観察の面白いところです。頭をつつっくと目玉模様が浮かびます」。


【ぐっと近づいて見る】
秋山さんは博物館で毎月「生きものミニ・サロン」を開いている。子どもたちが「ナニナニ??」と集まる。その瞬間がとても幸せだと語る。公園にある立て看板に、花や木を採ることは止めましょうと、いつもながらの禁止条項が掲出されている。管理上の注意だ。これを見て秋山さんは言う。「子どもたちには、自然に触れて貰って体感する。それを知って貰いたいのです」。いつでも、どこでも、身近な自然の環境のなかに“不思議”は潜んでいる。案内する人の説明をメモするのではなく、「自分で近づいて見ること」、それが大切と言う。
【フィールドノート】
秋山さんは、フィールドノートという言葉を挙げた。毎日の観察場所がマイフィールド。そこで見たもの、気が付いたものを書き留める。これがフィールドノート。気が付いた“なぜ?”を、たくさん書く。楽しいですと言う。
私たちの周辺で環境開発計画が起きたりする。これに反対するのではなく、よりよい方向への変化を求める行動を期待したい。これは普段からマイフィールドを見ている人に出来きる役割。環境の変化を捉えるセンサーを養おう、それが秋山さんの観察指導だ。
【「いつでも どこでも 誰とでも」】
秋山さんは昨年、穂高連峰の涸沢岳に登った。そこでライチョウを見た。後続の登山者に知らせた。その人たちは興奮し、「ライチョウだ」と叫んでいた。
北海道・釧路湿原では、タンチョウ観察の帰途、バス停にいた外国人カップルに逢った。タンチョウをまだ見ていないと言う。それではとUターンして案内した。夕陽を背景に飛ぶ姿に感動していた。誰とでも感動を分かち合う、それが自然観察だ。
【スズメの絵、描けますか】
スクリーンに大きく線画が描き出された。秋山さんは「これはスズメのアウトラインです。頭の絵を完成して」と会場に呼びかけた。ザワメキが起きた。「スズメは見慣れた鳥ですが、いざ描いてみると知らないことばかり。自然観察とは、そういうものです」。
秋山さんは、自然観察会で大切にしていることを述べた。「特別にものを見るのではなくて、普段見ているものでも、何だろうと考え、それを再現すること」。それが自然観察のポイントだという。


■海べに生きる植物たち

“渚の遊民”と称する酒井利幸さん(小田高21回生)は、第8回フォーラムで「キノコ狩は楽しいぞ!」を語った。早くも2度目の登壇だ。「専門家ではありません」と断りながら酒井さんは豊富な知識を、カメラのレンズを通して語る。それも「これは食べて美味しい」と身近な観察方法で紹介した。
相模湾の三浦半島から伊豆半島までの海岸線でとらえた植物たち。酒井さんは、カメラを通して約40種も会場のスクリーンに投影した。
それでは相模湾の海岸線を、海べの植物を探しながらの散歩です。

酒井さんが紹介した海べの植物は40種以上。「河川の上流で取水、発電、洪水対策が進んだ。川は土砂の流れが少なくなり、海岸はやせてしまった。海辺の植物は厳しい環境の中で生き続けている。その姿を今後も追っていきたい」と締めくくった。
※ここに紹介した植物の説明については➔令和元年(2019)12月発行の小田高同窓会(樫友会)会報『八幡山』第31号、それに掲載されている「第10回小田高自然環境フォーラム 野生の世界と私たち」の記事(同誌8頁~10頁)で説明コメントを載せています。
■芦ノ湖の水を早川へ流そう!

講師の勝俣正次さん(小田高25回生)は、箱根で育ち貸別荘を経営。早川流域環境懇談会の代表として、ズバリ、このタイトルを実現させる活動を展開している。
【芦ノ湖の水利権、神奈川県側にはない】
日本を代表する観光地・箱根・芦ノ湖。ここの水は、江戸時代、小田原藩が領地である現在の静岡県裾野でのコメ作を増産しようと、江戸商人の資金を導入、暗渠を切り抜き、裾野側に水を流したことに始まる。水利権は静岡県側にあって、地元箱根(神奈川県)にはない。
芦ノ湖の水をめぐる係争は続き、日本を代表する財界人、渋沢栄一、益田孝が登場する事件も起きた。その湖の水の一部を神奈川県側に流す理論的な考察、それが勝俣さんの主張だ。
【湖尻水門と深良(ふから)水門】
芦ノ湖の湖尻(桃源台)のキャンプ場からから芦ノ湖西岸を歩きだすと、改築された湖尻水門が現れる。相模湾に流れ下る早川への水門だ。水門から仙石原の早川の水源までは逆川(さかさがわ)が結ぶ。湖畔では湖尻水門を過ぎると、やがて深良水門。ここが江戸時代に開拓された裾野・深良へ芦ノ湖の水を流す入口だ。静岡県側が水利権をもつシンボルともいえる。
【「静岡県側の権利は侵さない」】
勝俣さんは言う。「私たちの主張は、静岡県側が持つ水利権を侵害してまで、湖の水を早川に流そうとしているのではない」。間違った受け止め方をしないでと訴える。
会場のスクリーンには、芦ノ湖の水位(基準観測点は湖の箱根園近く)の数字が図式と表で投影された。水位は、新しい湖尻水門が完成した平成2年以降、平均20センチ高くなっている。この水量が流れ出ないことで、芦ノ湖畔では溢水被害、同水門基礎工事での伏流水断絶で湖の水質劣化、早川・下流域の沿岸脆弱化での水害、早川河床の苔の未成熟で名物アユの小型化など、各面で影響が出ている。勝俣さんは、そう警鐘を鳴らす。
【伏流水に代わる常時“越水”を】
勝俣さんの主張・提案は、芦ノ湖の水利権の前に泣く地元箱根の、心からの声に聞こえた。新しい湖尻水門。これが伏流水の流れを止めている現況から、その伏流水に代わる“流れ”=越水を常時つくるという発想だ。神奈川・静岡両県当局に求められる行政行動、水争いの芦ノ湖を解決する喫緊の課題と写った。
「早川の清流を取り戻す百年に一度のチャンスは、今です」、勝俣さんの声は会場に響いた。
■オーストラリアに生きる――野生のインコ・オウムたち

最後の登壇者は、小田原で地域新聞ジャーナリストだった野生インコ写真家、岡本勇太さん。吉田島農林高58回生。夢を実現するために海外へ跳んだ。
【いざオーストラリアへ】
岡本さんは、「高校2年生の時、インコを飼っていた。その野生の生態を知りたくて棲息するオーストラリアに移住した」と自己紹介。オーストラリアは日本の約20倍もの大きな大陸。人口は約2000万人、シドニー、ブリスベンなどの都市は東海岸に集中。国の殆どは乾燥した大地だ。約6000万年以前から他の大陸とは陸続きになっていず、独特の動植物の生態系がある。カンガルーやコアラ、カモノハシ、エミューなど他の大陸にはいない動物がそれだ。
【インコは派手派、オウムは地味派】
さて、オウム目は世界で約350種。南米アマゾンやインドネシアの熱帯雨林、アフリカのサバンナ、オーストラリアの内陸地帯に棲息する。もともとは“森の鳥”でもあるオウム目の鳥たち。頭部にとさかのような冠羽があるのがオウム科、無いのがインコ科。インコは青や緑、赤など鮮やかな羽色で、世界中に約330種いる。オウムは白や灰色、黒など地味な羽色で、生息地域はフィリピンを北限に大洋州の狭い範囲だ。それに21種類しかいない。



【夕陽を背景に飛ぶ大群】
オーストラリアでは、オカメインコ(オウム科)は内陸に棲息。アウトバックと言われる地帯で、数年間も雨が降らないこともある。彼らは広大な大陸を移動する放浪の生態を見せる。セキセイインコ(インコ科)も内陸部に棲息。集団で移動している。岡本さんは、2019年1月、先輩の情報でセキセイインコの大群を探しに出た。拠点ケアンズ(東海岸)から1000キロ離れた内陸だが、更に400キロ先でこの大群に遭遇した。15万羽はいるであろう空イッパイの大群、夕陽を背景に飛ぶ姿は圧巻。「感動的だった」と岡本さん。投影された大群の写真に、会場から感嘆の声があがった。


【コアジサシで豪州と結ばれている】
オーストラリアと小田原市。“小田原の鳥”コアジサシで結ばれている。同国やニューギニア、南アジアで越冬するコアジサシは繁殖のために日本に渡来する。酒匂川の河口付近に巣作りをするが、最近その数が少なくなった。環境省の絶滅危惧種に指定されている。
【岡本さんの著書『インコのびのび』】
野生のオカメインコ、セキセイインコの写真集『インコのびのび』(文一総合出版)が出版された。ネットや書店で販売中です。
★
フォーラムの冒頭、小田高・岩本明子副校長(高33回生)は「小田高の構内には自然が多い。フォーラムでの多彩な話題は、それを更に身近なものにしてくれる」と期待感を寄せた。同窓会交流委員会の蛭田克美委員長(高15回生)は「小田高OBには世界的な研究者がいる。自然と親しむ感性が育っているからだ」と、日ごろの自然観察の姿を強調した。
フォーラムの司会は中山和也さん(高11回生)。フォーラム開催の事務局は陣野一郎さん(高12回生)が担当しました。小田高生物部OBの皆さんのご協力に感謝します。
小田高同窓会の目玉活動のひとつ「自然環境フォーラム」が10回目を迎えた。令和元年6月16日、母校小田高の集成館ホールで、表題「野生の世界と私たち」で開催された。その紹介です。(併せて小田高同窓会報「八幡山」第31号にも掲載されています)

会場風景

講師の皆さん
■「毎日が楽しくなる!自然観察のススメ」
最初に登壇した講師は、相模原市立博物館・学芸員の秋山幸也さん(小田高39回生)。相模原市内の北里大学で非常勤講師も務める。秋山さんは「わたしは、毎日の暮らしも、趣味でも、すべてが自然観察の世界にいる」と自己紹介した。
【擬態の動物を観察する】
壇上のスクリーンに桑の木が投影された。「この画面にクワコという昆虫がいます。判りますか」。枝と葉。そのどこに?ざわつく会場。秋山さんは画面を拡大した。枝の一部と見えたのが幼虫だ。「これがクワコの擬態です。自然観察の面白いところです。頭をつつっくと目玉模様が浮かびます」。


【ぐっと近づいて見る】
秋山さんは博物館で毎月「生きものミニ・サロン」を開いている。子どもたちが「ナニナニ??」と集まる。その瞬間がとても幸せだと語る。公園にある立て看板に、花や木を採ることは止めましょうと、いつもながらの禁止条項が掲出されている。管理上の注意だ。これを見て秋山さんは言う。「子どもたちには、自然に触れて貰って体感する。それを知って貰いたいのです」。いつでも、どこでも、身近な自然の環境のなかに“不思議”は潜んでいる。案内する人の説明をメモするのではなく、「自分で近づいて見ること」、それが大切と言う。

秋山さんは、フィールドノートという言葉を挙げた。毎日の観察場所がマイフィールド。そこで見たもの、気が付いたものを書き留める。これがフィールドノート。気が付いた“なぜ?”を、たくさん書く。楽しいですと言う。
私たちの周辺で環境開発計画が起きたりする。これに反対するのではなく、よりよい方向への変化を求める行動を期待したい。これは普段からマイフィールドを見ている人に出来きる役割。環境の変化を捉えるセンサーを養おう、それが秋山さんの観察指導だ。
【「いつでも どこでも 誰とでも」】
秋山さんは昨年、穂高連峰の涸沢岳に登った。そこでライチョウを見た。後続の登山者に知らせた。その人たちは興奮し、「ライチョウだ」と叫んでいた。
北海道・釧路湿原では、タンチョウ観察の帰途、バス停にいた外国人カップルに逢った。タンチョウをまだ見ていないと言う。それではとUターンして案内した。夕陽を背景に飛ぶ姿に感動していた。誰とでも感動を分かち合う、それが自然観察だ。
【スズメの絵、描けますか】
スクリーンに大きく線画が描き出された。秋山さんは「これはスズメのアウトラインです。頭の絵を完成して」と会場に呼びかけた。ザワメキが起きた。「スズメは見慣れた鳥ですが、いざ描いてみると知らないことばかり。自然観察とは、そういうものです」。
秋山さんは、自然観察会で大切にしていることを述べた。「特別にものを見るのではなくて、普段見ているものでも、何だろうと考え、それを再現すること」。それが自然観察のポイントだという。


■海べに生きる植物たち

“渚の遊民”と称する酒井利幸さん(小田高21回生)は、第8回フォーラムで「キノコ狩は楽しいぞ!」を語った。早くも2度目の登壇だ。「専門家ではありません」と断りながら酒井さんは豊富な知識を、カメラのレンズを通して語る。それも「これは食べて美味しい」と身近な観察方法で紹介した。
相模湾の三浦半島から伊豆半島までの海岸線でとらえた植物たち。酒井さんは、カメラを通して約40種も会場のスクリーンに投影した。
それでは相模湾の海岸線を、海べの植物を探しながらの散歩です。




















酒井さんが紹介した海べの植物は40種以上。「河川の上流で取水、発電、洪水対策が進んだ。川は土砂の流れが少なくなり、海岸はやせてしまった。海辺の植物は厳しい環境の中で生き続けている。その姿を今後も追っていきたい」と締めくくった。
※ここに紹介した植物の説明については➔令和元年(2019)12月発行の小田高同窓会(樫友会)会報『八幡山』第31号、それに掲載されている「第10回小田高自然環境フォーラム 野生の世界と私たち」の記事(同誌8頁~10頁)で説明コメントを載せています。
■芦ノ湖の水を早川へ流そう!

講師の勝俣正次さん(小田高25回生)は、箱根で育ち貸別荘を経営。早川流域環境懇談会の代表として、ズバリ、このタイトルを実現させる活動を展開している。
【芦ノ湖の水利権、神奈川県側にはない】
日本を代表する観光地・箱根・芦ノ湖。ここの水は、江戸時代、小田原藩が領地である現在の静岡県裾野でのコメ作を増産しようと、江戸商人の資金を導入、暗渠を切り抜き、裾野側に水を流したことに始まる。水利権は静岡県側にあって、地元箱根(神奈川県)にはない。
芦ノ湖の水をめぐる係争は続き、日本を代表する財界人、渋沢栄一、益田孝が登場する事件も起きた。その湖の水の一部を神奈川県側に流す理論的な考察、それが勝俣さんの主張だ。
【湖尻水門と深良(ふから)水門】
芦ノ湖の湖尻(桃源台)のキャンプ場からから芦ノ湖西岸を歩きだすと、改築された湖尻水門が現れる。相模湾に流れ下る早川への水門だ。水門から仙石原の早川の水源までは逆川(さかさがわ)が結ぶ。湖畔では湖尻水門を過ぎると、やがて深良水門。ここが江戸時代に開拓された裾野・深良へ芦ノ湖の水を流す入口だ。静岡県側が水利権をもつシンボルともいえる。

勝俣さんは言う。「私たちの主張は、静岡県側が持つ水利権を侵害してまで、湖の水を早川に流そうとしているのではない」。間違った受け止め方をしないでと訴える。
会場のスクリーンには、芦ノ湖の水位(基準観測点は湖の箱根園近く)の数字が図式と表で投影された。水位は、新しい湖尻水門が完成した平成2年以降、平均20センチ高くなっている。この水量が流れ出ないことで、芦ノ湖畔では溢水被害、同水門基礎工事での伏流水断絶で湖の水質劣化、早川・下流域の沿岸脆弱化での水害、早川河床の苔の未成熟で名物アユの小型化など、各面で影響が出ている。勝俣さんは、そう警鐘を鳴らす。
【伏流水に代わる常時“越水”を】
勝俣さんの主張・提案は、芦ノ湖の水利権の前に泣く地元箱根の、心からの声に聞こえた。新しい湖尻水門。これが伏流水の流れを止めている現況から、その伏流水に代わる“流れ”=越水を常時つくるという発想だ。神奈川・静岡両県当局に求められる行政行動、水争いの芦ノ湖を解決する喫緊の課題と写った。
「早川の清流を取り戻す百年に一度のチャンスは、今です」、勝俣さんの声は会場に響いた。
■オーストラリアに生きる――野生のインコ・オウムたち

最後の登壇者は、小田原で地域新聞ジャーナリストだった野生インコ写真家、岡本勇太さん。吉田島農林高58回生。夢を実現するために海外へ跳んだ。
【いざオーストラリアへ】
岡本さんは、「高校2年生の時、インコを飼っていた。その野生の生態を知りたくて棲息するオーストラリアに移住した」と自己紹介。オーストラリアは日本の約20倍もの大きな大陸。人口は約2000万人、シドニー、ブリスベンなどの都市は東海岸に集中。国の殆どは乾燥した大地だ。約6000万年以前から他の大陸とは陸続きになっていず、独特の動植物の生態系がある。カンガルーやコアラ、カモノハシ、エミューなど他の大陸にはいない動物がそれだ。
【インコは派手派、オウムは地味派】
さて、オウム目は世界で約350種。南米アマゾンやインドネシアの熱帯雨林、アフリカのサバンナ、オーストラリアの内陸地帯に棲息する。もともとは“森の鳥”でもあるオウム目の鳥たち。頭部にとさかのような冠羽があるのがオウム科、無いのがインコ科。インコは青や緑、赤など鮮やかな羽色で、世界中に約330種いる。オウムは白や灰色、黒など地味な羽色で、生息地域はフィリピンを北限に大洋州の狭い範囲だ。それに21種類しかいない。



【夕陽を背景に飛ぶ大群】
オーストラリアでは、オカメインコ(オウム科)は内陸に棲息。アウトバックと言われる地帯で、数年間も雨が降らないこともある。彼らは広大な大陸を移動する放浪の生態を見せる。セキセイインコ(インコ科)も内陸部に棲息。集団で移動している。岡本さんは、2019年1月、先輩の情報でセキセイインコの大群を探しに出た。拠点ケアンズ(東海岸)から1000キロ離れた内陸だが、更に400キロ先でこの大群に遭遇した。15万羽はいるであろう空イッパイの大群、夕陽を背景に飛ぶ姿は圧巻。「感動的だった」と岡本さん。投影された大群の写真に、会場から感嘆の声があがった。


【コアジサシで豪州と結ばれている】
オーストラリアと小田原市。“小田原の鳥”コアジサシで結ばれている。同国やニューギニア、南アジアで越冬するコアジサシは繁殖のために日本に渡来する。酒匂川の河口付近に巣作りをするが、最近その数が少なくなった。環境省の絶滅危惧種に指定されている。
【岡本さんの著書『インコのびのび』】
野生のオカメインコ、セキセイインコの写真集『インコのびのび』(文一総合出版)が出版された。ネットや書店で販売中です。
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フォーラムの司会は中山和也さん(高11回生)。フォーラム開催の事務局は陣野一郎さん(高12回生)が担当しました。小田高生物部OBの皆さんのご協力に感謝します。
小田高生物部OB会(会長 牧林功=高4回生)
取材・記事 宍倉正弘(高5回生)
編集=同窓会広報委員会 祖父江典子(高45回生)
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平成30年(2018)の第9回小田高自然環境フォーラム、見事に開花しました。講師のみなさん、ありがとうございます
校長先生も登壇、講師陣がみせた豊富な話題
平成30年(2018)6月17日。母校小田高の集成館ホールで第9回自然環境フォーラムが開かれた。タイトルは『見つけた!自然の魅力』。その内容の紹介です。
会場風景
■ヒマラヤの空は碧かった 勉強好きな子どもたち
(原題:ネパールの教育と生活)

講演のトップは小田高校長の反町聡之先生。第9回フォーラムのポスターにも、世界の高峰ヒマル・チュリをバックに颯爽と登場している。先生は約30年前、ネパール王国で2年間、青年海外協力隊の理数科の教員としてボランティア活動をした。ゴルカ郡ナレソール村のビンデバシニイー学校。首都カトマンズからゴルカ・バザールまでバスに揺られ約10時間、さらに急峻な山腹を歩いて2時間。電気、水道はなく、子どもたちは電車や自動車も見たことがない、文明から切り離された山奥だ。
【夜中、コヨーテの群れが遠吠え】
到着して現地の校長に挨拶。では明日から…と言われ、大慌てで英語担任の先生宅に下宿した。村でいう峠の茶屋の近くだ。電灯はない。夜は星空の下となる。部屋で寝ていると、家畜を狙うコヨーテの群れの遠吠えが聞こえる。すると家族が起き出して一斉にウオーッと“遠吠え”で返す。寝袋を担ぎ体力との勝負のネパールでの教員生活が始まった。
【勉強したい人と教える人がいる、それで教育は成り立つ】
反町先生の活動開始は昭和63年(1988)、ネパールにはまだ義務教育制度はなかった。小学校4年までの授業料は無償。教科書は有償だ。だから兄弟で使い回しをしてボロボロ。小5年生になると家事労働に駆り出されて登校する生徒は減る。でも険しい山道を1時間歩いてくる。「学校のほうが楽しい」と言う。黒板やノートのあるなしではない。「そこに勉強する子どもがいれば、教育は成り立つ」。このときそう思った
ネパールの学校の先生たち(前列中央が反町先生)
【ネパールの学校の先生たち】
この国では、校長は大卒の資格が必要だが、一般の先生は高校1年修了でなれる。その先生方と腹を割って色々と話した。当時、中国の毛沢東思想は秘密結社だった。それでもその政治信条を熱く語ってくれた。ネパールでの後半の生活では更に奥地に入り、小学校の理数科教員の養成協力を行った。
【教室を造ろう。窓ガラスはインドまで買い出し】
反町先生は、最初、ナレソール村で学校の理科教室を造った。ODA(政府開発援助)事業だ。教室の窓にはガラスがない。冬は寒風対策で窓は小さい、暗い。寒い。窓ガラスはどこで買うのと聞くと、国境を越えたインドだという。それでは、と5日がかりで現地の先生と二人でインドまでガラスを買いに出かけた。重かった。学校の校庭には夏の日の日陰用に、大きな樹菩提が必ずあった。子どもたちはそこが集会場になる。
ネパールの学校の門と図書館(背後の建物)
【母国語をしっかりと話せることが勉強なのだ】
反町先生のネパール語教師は子どもたちだ。夢も現地語で見るようになった。教員仲間との話で気がついた。母国語をしっかりと話せないと、外国情勢の理解はままならない。これを教訓に、小田高の生徒には、母国語を大切にすることが勉強の基礎になると指導している。
この日、反町先生は未公開の現地写真を大量に紹介した。
■山野を楽しく歩こう、その知識・植物編
(原題:楽しく歩く——植物豆知識)
箱根・湖尻のビジターセンターを拠点に観察活動をしている上妻(こうづま)信夫さん(自然公園財団、高15回生)。箱根をより楽しく歩きましょう、と様々な植物の写真を携えて登場した。
最初の問いかけは「目の前の植物の名前、どうして付けられたでしょうか?」。ラテン語で付いているのは世界共通の名称、日本語の名前は標準和名という。そして地域で呼ぶ名前もある。会場のスクリーンに、タムラソウが投影された。ナツノタムラソウも、アキノタムラソウもある。なぜ3つもあるの?この日の話題はここから始まった。(植物の写真はインターネットで検索してみてください)
【植物の名前は、かなりいい加減?】
アケビの写真を紹介。何でアケビなの?ムベという植物がある。その実が中々開かない。やがて二つに割ける、開ける…アケビとなる。「学者に怒られるかもしれないが」と断り、植物の名前はいい加減に付けられていると事例をあげた。人と関わりの強い植物は昔から名前が付いていて、新しく見つかるものは発見者が付ける。植物は特徴を覚えると、イッパツで覚えられる、と上妻さん。
【気の毒な名前の植物たち】
ウバユリ。何で乳母なの。乳母はお年寄りが一般的で、歯(葉)がない、だからだと…。ヌスビトハギ。この植物の実は歩く人のズボンに勝手に付いてしまう。だから。ドロボーハギともいう。ハキダメギク。植物学者が最初に発見した場所が掃きだめだった。だから…。ヘクソカズラ。最初に採取されたとき、屁クソの臭いがした。だから…。ヤイトバナ。お灸をすえると皮膚がヤケドして醜くなる。その痕に似ているから。
【イヌやウマの名が付くと食用にならない植物】
動物の名前がアタマに付くとあまりよくない。ツゲがそうだ。女性が髪をすく櫛(くし)や印鑑の材料になる植物だ。木質はきめ細かい。でも木質がザクザクで商品化できないのもある、イヌツゲだ。香辛料のサンショ(山椒)も、イヌザンショ、カラスザンショは食用にならない。
【嫌な名前の植物たち】
ママコノシリヌグイ。葉っぱを触ってみるとトゲトゲしている。継子(ままこ)イジメで、この葉でお尻を拭ってやると痛がって泣く。だから…。ムカゴイラクサ。これもトゲトゲがある。葉っぱを触ると細かいトゲが付いて取れない。イライラする、イラつく。
【山で迷ったら、この草を辿って…】
山でよく目に付くのがオオバコ。人が歩いた後に必ず生えてくる。この草が列で並んでいる方向に歩けば、間違いなく人里にたどり着く。
【味覚や聴覚、嗅覚など五感の植物名】
エゴノキ。実を噛んでみるとエグイ。溜め池の小魚が気絶して浮き上がってくる。ウラシマソウ。こんにゃくの仲間だが、根芋は辛くて食えない。山が真っ赤に彩られるカジカエデ。クサギは匂いが好き嫌いの半々に分かれる。ゴマ油のような匂いはゴマギ。タケニグサは竹とは違うが、揺さぶるとサラサラと竹林を風が渡るような音がする。
■ヒアリ談義
世界のアリ博士、近藤正樹さん(近藤蟻蜘蛛研究所、白梅短大名誉教授、高5回生)の登壇だ。「きょう関西で大量のヒアリが見つかった」と司会者が紹介すると、「みなさん、刺されても死ぬ心配はありません。騒ぐのはジャ−ナリストの誇張です」。いつもながらの“近藤節”でヒアリ談義は始まった。
ヒアリのTシャツ姿の近藤正樹氏
【ヒアリの現状、どうなっているの】
ヒアリの種群は、世界に約260種。このなかで厄介なのが「Red important fire ant」という種だ。1930年代、アルゼンチンやブラジルから船便で米国に上陸。フロリダ州モービルから同心円状に北のヴァージニア州にまで広がった。この拡散は物流に伴っている。日本上陸は中国経由といわれる。日本には米軍基地がある。日米地位協定で米軍関係者や貨物は直接入国して検疫もない。気をつけなければならない地点だ。
【ヒアリって、どんなアリなの】
体長1.6ミリから5ミリの茶褐色したアリがそうだ。お腹に二つの節がある。分類では2節アリという。十節の触角をもち、時にはショック死までひき起こす毒素ビベリジンを相手に植え付ける。噛むのではなく、刺すのだ。燃えるような強い痛みが走る。皮膚には白い膿泡が出来る。学名のfireには痛いという意味もあって、日本語直訳で“ヒ(火)アリ”。その命名者は誰か分からない。
【ヒアリが棲息する環境は】
ヒアリが棲息する気温は25度(C)から30度。これを超えると仮眠状態で動けない。日本では冬は気温が下がり過ぎて死んでしまう。だから繁殖は在り得ないが、都会の地下の温度が冬季でも温かいのが気になる。
【ヒアリの弱点。ブルブル体をゆすること】
草むらや都会の荒れ地に棲息するヒアリ。駆除で殺虫剤を撒く考えもあるが、これだと他のアリや生物、植物までダメにしてしまう。ヒアリの特徴を知っておいて欲しい。彼らはしがみつく力が弱い。滑る素材のところには攻めてこない。草むらで観察する研究者は、ゴム長靴を履き、常に体や足を震わせている。こうすることでヒアリ対応が出来る。
【ヒアリ研究は十分に行われている】
研究は米国が主だ。ジョージア大、フロリダ大、テキサス大、農商務省の附属研究機関など。日本や各国の研究機関は後発だが、それなりの知識は備えている。日本でのヒアリ対策は、環境省と文科省が水際作戦でシッカリと対応している。恐れることはありません。
【ヒアリ対策の秘密、教えます】
ヒアリが侵入拡大している台湾や中国。ここの人たちが日本旅行で密かに買う家庭用のヒアリ対策の商品がある。子どもたちが好きなトンガリコーンだ。どうやら製造過程で使う特定の食用油が、ヒアリを誘引するらしい。ホント?米軍基地周辺にばら撒いてみますか。
■標本で生き続ける自然の姿
(原題:自然財・標本を後世に残す)
箱根登山電車の入生田駅。そこから見える堂々たる殿堂。県立・生命の星地球博物館だ。ここで研究と観察指導を続ける加藤ゆきさん(同館の学芸員 東京都立富士高OG)が登壇した。出身母校の冨士高は、日比谷、新宿、西などと肩を並べる都立の進学校だ。
【まずは自己紹介から】
加藤さんは鳥類の生態研究者。「鳥を観て29年。一番好きなトリは沖縄に棲息するヤンバルクイナです」。中学生の時、ある企業が出した愛鳥ポスターの写真がヤンバルクイナだった。それに魅了されて鳥の世界に入った。このポスターは今も大切に持っているという。
【博物館、どんなところか知ってる?】
はく製標本が並べてあるところ?遠足で行くところ?雨の日の雨宿り先?確かに雨の日は賑わっている!県立地球博物館の標本など収蔵物は約87万2000点(2018年3月現在)、さらに増え続けている。最も多いのは植物関係で約30万点、次いで昆虫だ。標本の殆どは収蔵庫に保管されている。
【何故、標本をつくるの?】
たんに見て観察して貰うだけではない。例えば過去の時代、スズメはいたの?と問われても、書いたものでは証明できない。はく製標本があれば、ある時代の、ある環境での実物証拠になる。未来へ受け継ぐ貴重な財産である。
【小田高のトキはく製、歴史を語る】
会場のスクリーンに、東アジアでのトキ標本の分布図が投影された。日本では新潟県が多い。小田高に保存されているトキのはく製標本は1912年(明治45年)制作。分布図と照合すると朝鮮半島で採集されたトキであることがわかる。
【標本が語る実物証拠】
県立地球博物館にあるトキの標本は、幼鳥のトキの本はく製で、県立鶴見高にあったものを移管した。戦前に丹沢で採集されたものだ。いまの県立翠嵐高にもトキの標本があった。でも敗戦で同校が米軍に接収、その後失火で焼失してしまった。絶滅種のトキは2008年(平成20年)になって野生復帰事業として放鳥された。その翌09年8月、佐渡でカラー・マーキングのある羽が採集された。放鳥のトキが翌年夏まで生きのびていた実物証拠である。「そのときの写真は私の夫(写真家、重永明生さん)が撮った」と加藤さん。少し照れた。
【はく製標本の寿命は100年以上】
県立地球博物館で最も古い鳥類のはく製標本は、1906年(明治39年)、スウェーデンで採集されたカラフトライチョウ(仮はく製)。100年以上も保存されてきた。欧米の博物館では、200年、300年経っているものが見られる。自然史を語る証拠が生き続けているのだ。
加藤さんは講演の後半、はく製標本の作り方からその作業、保管方法を、パワーポイントを使って話し、「一緒に自然史の記録を残しましょう」と、会場のみなさんに呼びかけた。
フォーラムに先立って、小田高同窓会(樫友会)の津田憲一郎会長が「ことしもグローバルな話題が並び愉しみだ」と挨拶。平塚専一副校長は「私は大学で農業土木が専攻。生態系を守る大切さを学びたい」と、フォーラムにエールを送った。
津田小田高同窓会長
小田高 平塚専一副校長
司会は中山和也さん(高11回生)。フォーラム開催では同窓会交流委員会の支援を受けました。お礼申し上げます。
平成30年(2018)6月17日。母校小田高の集成館ホールで第9回自然環境フォーラムが開かれた。タイトルは『見つけた!自然の魅力』。その内容の紹介です。

■ヒマラヤの空は碧かった 勉強好きな子どもたち
(原題:ネパールの教育と生活)

講演のトップは小田高校長の反町聡之先生。第9回フォーラムのポスターにも、世界の高峰ヒマル・チュリをバックに颯爽と登場している。先生は約30年前、ネパール王国で2年間、青年海外協力隊の理数科の教員としてボランティア活動をした。ゴルカ郡ナレソール村のビンデバシニイー学校。首都カトマンズからゴルカ・バザールまでバスに揺られ約10時間、さらに急峻な山腹を歩いて2時間。電気、水道はなく、子どもたちは電車や自動車も見たことがない、文明から切り離された山奥だ。
【夜中、コヨーテの群れが遠吠え】
到着して現地の校長に挨拶。では明日から…と言われ、大慌てで英語担任の先生宅に下宿した。村でいう峠の茶屋の近くだ。電灯はない。夜は星空の下となる。部屋で寝ていると、家畜を狙うコヨーテの群れの遠吠えが聞こえる。すると家族が起き出して一斉にウオーッと“遠吠え”で返す。寝袋を担ぎ体力との勝負のネパールでの教員生活が始まった。
【勉強したい人と教える人がいる、それで教育は成り立つ】
反町先生の活動開始は昭和63年(1988)、ネパールにはまだ義務教育制度はなかった。小学校4年までの授業料は無償。教科書は有償だ。だから兄弟で使い回しをしてボロボロ。小5年生になると家事労働に駆り出されて登校する生徒は減る。でも険しい山道を1時間歩いてくる。「学校のほうが楽しい」と言う。黒板やノートのあるなしではない。「そこに勉強する子どもがいれば、教育は成り立つ」。このときそう思った

【ネパールの学校の先生たち】
この国では、校長は大卒の資格が必要だが、一般の先生は高校1年修了でなれる。その先生方と腹を割って色々と話した。当時、中国の毛沢東思想は秘密結社だった。それでもその政治信条を熱く語ってくれた。ネパールでの後半の生活では更に奥地に入り、小学校の理数科教員の養成協力を行った。
【教室を造ろう。窓ガラスはインドまで買い出し】
反町先生は、最初、ナレソール村で学校の理科教室を造った。ODA(政府開発援助)事業だ。教室の窓にはガラスがない。冬は寒風対策で窓は小さい、暗い。寒い。窓ガラスはどこで買うのと聞くと、国境を越えたインドだという。それでは、と5日がかりで現地の先生と二人でインドまでガラスを買いに出かけた。重かった。学校の校庭には夏の日の日陰用に、大きな樹菩提が必ずあった。子どもたちはそこが集会場になる。

【母国語をしっかりと話せることが勉強なのだ】
反町先生のネパール語教師は子どもたちだ。夢も現地語で見るようになった。教員仲間との話で気がついた。母国語をしっかりと話せないと、外国情勢の理解はままならない。これを教訓に、小田高の生徒には、母国語を大切にすることが勉強の基礎になると指導している。
この日、反町先生は未公開の現地写真を大量に紹介した。
■山野を楽しく歩こう、その知識・植物編
(原題:楽しく歩く——植物豆知識)

最初の問いかけは「目の前の植物の名前、どうして付けられたでしょうか?」。ラテン語で付いているのは世界共通の名称、日本語の名前は標準和名という。そして地域で呼ぶ名前もある。会場のスクリーンに、タムラソウが投影された。ナツノタムラソウも、アキノタムラソウもある。なぜ3つもあるの?この日の話題はここから始まった。(植物の写真はインターネットで検索してみてください)
【植物の名前は、かなりいい加減?】
アケビの写真を紹介。何でアケビなの?ムベという植物がある。その実が中々開かない。やがて二つに割ける、開ける…アケビとなる。「学者に怒られるかもしれないが」と断り、植物の名前はいい加減に付けられていると事例をあげた。人と関わりの強い植物は昔から名前が付いていて、新しく見つかるものは発見者が付ける。植物は特徴を覚えると、イッパツで覚えられる、と上妻さん。
【気の毒な名前の植物たち】
ウバユリ。何で乳母なの。乳母はお年寄りが一般的で、歯(葉)がない、だからだと…。ヌスビトハギ。この植物の実は歩く人のズボンに勝手に付いてしまう。だから。ドロボーハギともいう。ハキダメギク。植物学者が最初に発見した場所が掃きだめだった。だから…。ヘクソカズラ。最初に採取されたとき、屁クソの臭いがした。だから…。ヤイトバナ。お灸をすえると皮膚がヤケドして醜くなる。その痕に似ているから。
【イヌやウマの名が付くと食用にならない植物】
動物の名前がアタマに付くとあまりよくない。ツゲがそうだ。女性が髪をすく櫛(くし)や印鑑の材料になる植物だ。木質はきめ細かい。でも木質がザクザクで商品化できないのもある、イヌツゲだ。香辛料のサンショ(山椒)も、イヌザンショ、カラスザンショは食用にならない。
【嫌な名前の植物たち】
ママコノシリヌグイ。葉っぱを触ってみるとトゲトゲしている。継子(ままこ)イジメで、この葉でお尻を拭ってやると痛がって泣く。だから…。ムカゴイラクサ。これもトゲトゲがある。葉っぱを触ると細かいトゲが付いて取れない。イライラする、イラつく。
【山で迷ったら、この草を辿って…】
山でよく目に付くのがオオバコ。人が歩いた後に必ず生えてくる。この草が列で並んでいる方向に歩けば、間違いなく人里にたどり着く。
【味覚や聴覚、嗅覚など五感の植物名】
エゴノキ。実を噛んでみるとエグイ。溜め池の小魚が気絶して浮き上がってくる。ウラシマソウ。こんにゃくの仲間だが、根芋は辛くて食えない。山が真っ赤に彩られるカジカエデ。クサギは匂いが好き嫌いの半々に分かれる。ゴマ油のような匂いはゴマギ。タケニグサは竹とは違うが、揺さぶるとサラサラと竹林を風が渡るような音がする。
■ヒアリ談義
世界のアリ博士、近藤正樹さん(近藤蟻蜘蛛研究所、白梅短大名誉教授、高5回生)の登壇だ。「きょう関西で大量のヒアリが見つかった」と司会者が紹介すると、「みなさん、刺されても死ぬ心配はありません。騒ぐのはジャ−ナリストの誇張です」。いつもながらの“近藤節”でヒアリ談義は始まった。

【ヒアリの現状、どうなっているの】
ヒアリの種群は、世界に約260種。このなかで厄介なのが「Red important fire ant」という種だ。1930年代、アルゼンチンやブラジルから船便で米国に上陸。フロリダ州モービルから同心円状に北のヴァージニア州にまで広がった。この拡散は物流に伴っている。日本上陸は中国経由といわれる。日本には米軍基地がある。日米地位協定で米軍関係者や貨物は直接入国して検疫もない。気をつけなければならない地点だ。
【ヒアリって、どんなアリなの】
体長1.6ミリから5ミリの茶褐色したアリがそうだ。お腹に二つの節がある。分類では2節アリという。十節の触角をもち、時にはショック死までひき起こす毒素ビベリジンを相手に植え付ける。噛むのではなく、刺すのだ。燃えるような強い痛みが走る。皮膚には白い膿泡が出来る。学名のfireには痛いという意味もあって、日本語直訳で“ヒ(火)アリ”。その命名者は誰か分からない。
【ヒアリが棲息する環境は】
ヒアリが棲息する気温は25度(C)から30度。これを超えると仮眠状態で動けない。日本では冬は気温が下がり過ぎて死んでしまう。だから繁殖は在り得ないが、都会の地下の温度が冬季でも温かいのが気になる。

草むらや都会の荒れ地に棲息するヒアリ。駆除で殺虫剤を撒く考えもあるが、これだと他のアリや生物、植物までダメにしてしまう。ヒアリの特徴を知っておいて欲しい。彼らはしがみつく力が弱い。滑る素材のところには攻めてこない。草むらで観察する研究者は、ゴム長靴を履き、常に体や足を震わせている。こうすることでヒアリ対応が出来る。
【ヒアリ研究は十分に行われている】
研究は米国が主だ。ジョージア大、フロリダ大、テキサス大、農商務省の附属研究機関など。日本や各国の研究機関は後発だが、それなりの知識は備えている。日本でのヒアリ対策は、環境省と文科省が水際作戦でシッカリと対応している。恐れることはありません。
【ヒアリ対策の秘密、教えます】
ヒアリが侵入拡大している台湾や中国。ここの人たちが日本旅行で密かに買う家庭用のヒアリ対策の商品がある。子どもたちが好きなトンガリコーンだ。どうやら製造過程で使う特定の食用油が、ヒアリを誘引するらしい。ホント?米軍基地周辺にばら撒いてみますか。
■標本で生き続ける自然の姿
(原題:自然財・標本を後世に残す)

【まずは自己紹介から】
加藤さんは鳥類の生態研究者。「鳥を観て29年。一番好きなトリは沖縄に棲息するヤンバルクイナです」。中学生の時、ある企業が出した愛鳥ポスターの写真がヤンバルクイナだった。それに魅了されて鳥の世界に入った。このポスターは今も大切に持っているという。
【博物館、どんなところか知ってる?】
はく製標本が並べてあるところ?遠足で行くところ?雨の日の雨宿り先?確かに雨の日は賑わっている!県立地球博物館の標本など収蔵物は約87万2000点(2018年3月現在)、さらに増え続けている。最も多いのは植物関係で約30万点、次いで昆虫だ。標本の殆どは収蔵庫に保管されている。
【何故、標本をつくるの?】
たんに見て観察して貰うだけではない。例えば過去の時代、スズメはいたの?と問われても、書いたものでは証明できない。はく製標本があれば、ある時代の、ある環境での実物証拠になる。未来へ受け継ぐ貴重な財産である。
【小田高のトキはく製、歴史を語る】
会場のスクリーンに、東アジアでのトキ標本の分布図が投影された。日本では新潟県が多い。小田高に保存されているトキのはく製標本は1912年(明治45年)制作。分布図と照合すると朝鮮半島で採集されたトキであることがわかる。
【標本が語る実物証拠】
県立地球博物館にあるトキの標本は、幼鳥のトキの本はく製で、県立鶴見高にあったものを移管した。戦前に丹沢で採集されたものだ。いまの県立翠嵐高にもトキの標本があった。でも敗戦で同校が米軍に接収、その後失火で焼失してしまった。絶滅種のトキは2008年(平成20年)になって野生復帰事業として放鳥された。その翌09年8月、佐渡でカラー・マーキングのある羽が採集された。放鳥のトキが翌年夏まで生きのびていた実物証拠である。「そのときの写真は私の夫(写真家、重永明生さん)が撮った」と加藤さん。少し照れた。
【はく製標本の寿命は100年以上】
県立地球博物館で最も古い鳥類のはく製標本は、1906年(明治39年)、スウェーデンで採集されたカラフトライチョウ(仮はく製)。100年以上も保存されてきた。欧米の博物館では、200年、300年経っているものが見られる。自然史を語る証拠が生き続けているのだ。
加藤さんは講演の後半、はく製標本の作り方からその作業、保管方法を、パワーポイントを使って話し、「一緒に自然史の記録を残しましょう」と、会場のみなさんに呼びかけた。
フォーラムに先立って、小田高同窓会(樫友会)の津田憲一郎会長が「ことしもグローバルな話題が並び愉しみだ」と挨拶。平塚専一副校長は「私は大学で農業土木が専攻。生態系を守る大切さを学びたい」と、フォーラムにエールを送った。


司会は中山和也さん(高11回生)。フォーラム開催では同窓会交流委員会の支援を受けました。お礼申し上げます。
小田高生物部OB会・会長 牧林 功(高4回生)
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第9回小田高自然環境フォーラム,反町校長先生のネパール報告などで大盛り上がりでした(詳報は別項でご覧ください)
ことし(2018年、平成30年)も小田高同窓会「樫友会」の自然環境フォーラムの季節です。今回のテーマは『見つけた!自然の魅力』。フォーラムは見事に開花しました。そのときの模様、再生は別項で詳報しています。ご覧ください。
フォーラムに参加の講師の方々です。
注目は小田高校長の反町(そりまち)聡之先生の登場です。先生は青年海外協力隊の理数科教員として2年間、ネパールで子どもたちを教え、階級制が徹底しているカーストの世界で生活してきました。当時の貴重な写真が多数紹介されました。
箱根・湖尻の自然公園財団の上妻(こうずま)信夫さん(小田高15回生)は、「こんな豆知識があれば、自然豊かな箱根は更に楽しく歩けます」と、訪れる観光客に何よりの話を展開しました。
小田原駅西口近くに近藤蟻蜘蛛研究所(予約すれば標本の見学もできます)を開設している白梅短大名誉教授の近藤正樹さん(小田高5回生)は、恐ろしいヒアリの日本上陸の話です。「刺されてその毒で死ぬようなことはありません」という反面、注意しなと大変なことになると警告しました。
箱根登山鉄道入生田駅近くにある県立生命の星・地球博物館の学芸員、加藤ゆきさん(都立冨士高校OG)は、博物館は「雨の日の立ち寄り所ではありませんよ」と冗談を飛ばしながら、博物館に展示されているはく製標本などのもつ意義を判り易く説明していました。例えば新潟県佐渡島で生育されているトキ。絶滅種の特別天然記念物ですが、同種のトキのはく製標本が小田高にあります。この標本のトキは、いつ頃、どこで、捕獲されたのか。こういう話を小中学生の生徒が聞けば、博物館めぐりは更に楽しくなるだろうな、というのが印象でした。
【開催日】平成30年6月17日(日曜日)
【会 場】小田原高校 2階「集成館ホール」
【話をしてくださる方々】(敬称略)
〇ネパールの教育と生活
反町聡之(小田原高校・校長)
〇楽しく歩く、植物豆知識
上妻信夫(箱根・自然公園財団 小田高15回卒)
〇ヒアリ談義
近藤正樹(近藤蟻蜘蛛研究所所長 小田高5回卒)
〇自然財・標本を後世に残す
加藤ゆき(生命の星・地球博物館 学芸員)
【主 催】小田高同窓会「樫友会」・小田高生物部OB会・酒匂川水系の環境を考える会・小田原高校
【後 援】小田原市・FMおだわら78.7MHz
フォーラムに参加の講師の方々です。
注目は小田高校長の反町(そりまち)聡之先生の登場です。先生は青年海外協力隊の理数科教員として2年間、ネパールで子どもたちを教え、階級制が徹底しているカーストの世界で生活してきました。当時の貴重な写真が多数紹介されました。
箱根・湖尻の自然公園財団の上妻(こうずま)信夫さん(小田高15回生)は、「こんな豆知識があれば、自然豊かな箱根は更に楽しく歩けます」と、訪れる観光客に何よりの話を展開しました。
小田原駅西口近くに近藤蟻蜘蛛研究所(予約すれば標本の見学もできます)を開設している白梅短大名誉教授の近藤正樹さん(小田高5回生)は、恐ろしいヒアリの日本上陸の話です。「刺されてその毒で死ぬようなことはありません」という反面、注意しなと大変なことになると警告しました。
箱根登山鉄道入生田駅近くにある県立生命の星・地球博物館の学芸員、加藤ゆきさん(都立冨士高校OG)は、博物館は「雨の日の立ち寄り所ではありませんよ」と冗談を飛ばしながら、博物館に展示されているはく製標本などのもつ意義を判り易く説明していました。例えば新潟県佐渡島で生育されているトキ。絶滅種の特別天然記念物ですが、同種のトキのはく製標本が小田高にあります。この標本のトキは、いつ頃、どこで、捕獲されたのか。こういう話を小中学生の生徒が聞けば、博物館めぐりは更に楽しくなるだろうな、というのが印象でした。
【開催日】平成30年6月17日(日曜日)
【会 場】小田原高校 2階「集成館ホール」
【話をしてくださる方々】(敬称略)
〇ネパールの教育と生活
反町聡之(小田原高校・校長)
〇楽しく歩く、植物豆知識
上妻信夫(箱根・自然公園財団 小田高15回卒)
〇ヒアリ談義
近藤正樹(近藤蟻蜘蛛研究所所長 小田高5回卒)
〇自然財・標本を後世に残す
加藤ゆき(生命の星・地球博物館 学芸員)
【主 催】小田高同窓会「樫友会」・小田高生物部OB会・酒匂川水系の環境を考える会・小田原高校
【後 援】小田原市・FMおだわら78.7MHz

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第8回小田高自然環境フォーラム、愉しく開催(詳報)
全国高校サッカー準優勝の当時のキャプテンも講師で登場
ことし(平成29年)も自然環境フォーラムの季節がやってきた。開催は6月18日。会場は母校の集成館ホール。こどもと一緒の家族も姿を見せ話題豊富な催しとなった。講師陣には小田高が全国高校サッカーで全国準優勝した当時のキャプテンも…。
タイトルは『あなたは知っていますか?植物パワー』。さあ、その紹介です。

■トリカブトは「クスリ」です!?
講師は川口數美さん(高3回)。東北大大学院から農水省へ。現在は三和生薬(株)=本社・宇都宮市=で薬用植物の品種改良を続けている。「天下りではありません」。川口さんのパワーある声が会場に響く。社長は元海軍軍人。川口さんに「元気なうちは研究を続けてほしい」とお墨付きを出している。
【全国高校サッカー準優勝当時の主将】
「母校でまさか研究の話しをするなんて…」と感慨深げだ。川口さんは昭和26年、小田高が全国高校サッカーで準優勝したときの主将、FWだった。会場の関心はそのサッカーに…。
川口さんの講演が始まった。
【トリカブトはどんな植物?】
キンポウゲ科で、オダマキ、フクジュソウも同じ科目だ。南半球では発見されていない。日本では沖縄を除く全国に分布し40から50種はある。種芋(母根)、附子(ぶし、子根)、茎、枝、葉、花のどこにも毒がある。花弁のように見えるが実は萼(がく)。母根に付いた附子を特殊加工したのが生薬で、薬物のトリカブトだ。この植物に触れても大丈夫。川口さんはトリカブト畑で25年間も調査をしているが、中毒になったことはないという。
【松本清張の小説にも毒物として登場】
人気作家の松本清張はトリカブトの毒を扱った推理小説を書いている。沖縄県では実際に保険金目当てでトリカブト殺人事件が起きた。室町時代の狂言「附子ぶす」にもトリカブトが出て来る。現代にはいり秋田県の営林署で職員が蜂蜜を食べて食中毒になった。ミツバチがトリカブトの花粉(毒がある)を集めていたのが原因だった。
【クスリになるのは?】
トリカブトは西洋では毒薬につかわれることが多いが、東洋ではむしろ薬に使われてきた。減毒方法を早く見つけたからだ。三和生薬では最初は群馬や栃木県で、現在は北海道で栽培、そこで附子を原料に薬にしている。医療用附子製剤と生薬製剤だ。効能は神経症、関節リュウマチ、消化器系や婦人病、かぜ、糖尿病などだ。会場から「帯状疱疹で悩んでいる。その処方薬に?」と悲鳴のような質問が。「薬事法では農業研究者は病気の対処療法を話せない。漢方医に聞いて…」
【サッカー余談】
全国準優勝のことに質問が飛んだ。「ボクは勉強はしなかったが、サッカーの練習は必ずやった」と川口さん。「数学だけはできた。それで東北大に進めた」と。会場の在校生には真正面からのシュートのようだった。
■キノコ狩りは楽しいぞ!
講師の“森の自遊人”酒井利幸さん(高21回)は、高校生のときは自動車部にいた。運動場で中古車の運転練習をしていると、サッカー部や陸上部からジャマ扱いにされたそうだ。
【箱根・金時山登山では最年少記録】
酒井さんは生後8か月のとき、父親のリュックに入れられて金時山に行っている。「最年少の登山記録保持者です」と。大きくなって山頂の金時茶屋で当時の登山者名簿を探して貰った。だが残念!発見できなかった。この話からキノコ狩りへと展開した。
【キノコは植物なの?】
「キノコは菌です」、カビの仲間でもある。日本国内で約5千種、世界では6万種はあるだろうという。山にはキノコは一年中生えている。食用となると夏から秋にかけてが最盛期だ。キノコは自由に採っていいのか。やはり山の持ち主に断った方がいい。入山鑑札券などがあればそれを使う。採集ルールを守ろうと酒井さんは言う。
【さあ、キノコ狩りの始まりです】
(タマゴタケ)
会場のスクリーンに投影されたのは、まずタマゴタケ。傘が赤く毒キノコのようだが食用。美味で仏料理の食材だ。日本TVの新日曜ドラマ『フランケンシュタインの恋』のバックに映るベニテングタケは、童話の世界をつくり出すが、れっきとした毒キノコ。キヌガサダケはレースを羽織っている。中華料理では最高級食材だ。朝早く出て夕方に萎んでしまう。
(キヌガサダケ)
【初心者向けのキノコ】
人気があるのがハナイグチ。直ぐ見つかる。ぬめりがあるがこれが美味。大根おろしやキノコ汁で食べれば申し分なし。夏のキノコの代表格がチチタケ。北関東の人たちはよく食べている。
【TV局はキノコ大好き?】
イタリアではボルチーニと言われるヤマドリタケは、フジTVのドラマ『貴族探偵』の第1話に登場。なじみの薄いキノコだが、非常に美味。酒井さんの密かな楽しみだそうだ。NHKの朝ドラ『ごちそうさん』ではクロカワが登場。俳優近藤正臣が料理好きの父親役で調理して見せた。酒井さんは「TV局のディレクターの間では、キノコは密かなブームかな?」と推察していた。
【森の少年少女合唱団…】
酒井さんが撮るキノコの美しい姿や珍しい写真。小田高同窓会報『八幡山』やこのHPでご紹介できないのは残念だが、個展の企画もありそう、その機会にぜひ見て戴きたい。
食べられないキノコの一つセンボンクズタケの姿はきれい。「私は森の少年少女合唱団と言っているんです」と酒井さん。「山ではキノコに逢う愉しみがある。でも夢中になると方向感を失い迷子になる。ご注意を」と警鐘をならす。この日紹介されたのは40種類。木の上に付いている珍しいキノコ、人間の頭ほどもある大型のオオモミタケ、生の珍品キクラゲ、ブナ林で採れるブナハリタケ、杉林で採れるスギヒラタケなども登場した。
【箱根に現れた猛毒のキノコ】
最近、箱根・仙石原で見つかったのが猛毒のカエンダケ。手が触れただけでも火傷をする厄介なヤツだ。
【毒かどうかの見分け方は?】
酒井さんは断言する。「見分ける方程式はありません。ひとつひとつ覚えるしかないでしょう。迷信のたぐいは信じないように」と。
■機能性野菜の科学
講師の佐竹元吉さん(高12回)は、昭和薬科大学の薬用植物園でいまも研究を続けている。講演は在校生の前に繰り上げて行われた。
【アンデスの畑では】
機能性野菜は南米アンデス、中央アジア、熱帯のアジア、地中海沿岸、アフリカなど各地で見られる。アンデスの野菜ではまずムラサキトウモロコシ、大腸がんの予防作用がある。ペルーで話題になるのはカブの一種マカ。アブラナ科の植物で、貴重な滋養強壮剤である。このエキスは筋肉痛、凍傷、養毛剤に使われる。
【日本とのかかわり】
ラッカセイも原産地は南米大陸だ。薬としてペルーからメキシコに伝わり脂肪酸が豊かな食材である。ジャガイモは、やけどや湿疹にも使われる。ドイツのフリードリッヒⅠ世は食用として普及させた。日本にはオランダ交易で運ばれてきたが、明治時代には英国から川田龍吉男爵が持ち込み、それが男爵薯となった。トウガラシは豊臣秀吉の海外遠征で朝鮮半島に持ち込みキムチ漬に使われるようになった。
【中央アジアでは】
ニンニク、タマネギなどが挙げられる。ニンニクは血圧降下作用、動脈硬化症の軽減作用がある。タマネギは動脈硬化の予防効果、胃弱や便秘にもいい。タマネギに含まれるアリシンは血液改善効果が期待される。調理中に涙が出るのはアリシンによるもので、硫化アリルが催涙作用になるからだ。
【熱帯アジアの野菜】
まずショウガ。かぜや腰痛、食欲減退などの症状には必要な食材だ。健胃薬にもなる。ショウガがもつ殺菌効果で、刺身などのなま物の食材に沿えてつかわれる。このほかレンコン、ゴーヤそれにコメも機能性野菜である。
【キャベツやレタスは地中海沿岸から】
キャベツは古代ギリシャでは薬用、古代ローマでも保健食だった。内臓の胃壁や腸壁のただれの修復作用がある。胃の不調にはキャベツをバリバリ食べる人がいる。キャベツはケルト人が野生の植物ケールを改良した。葉は結球してキャベツに、花がブロッコリーとカリフラワーに。生活習慣病の予防にいい。レタスは古代エジプトに記録がある。日本には平安時代に中国を経て入ってきた。美肌効果と動脈硬化の予防になる。
【アフリカの野菜、余話】
ゴマはスーダン東部が原産地。日本では縄文時代の出土記録があり、奈良時代には畑で栽培されていた。ゴマ油は食用と灯油用だ。アラビアンナイトの「開け!ゴマ」は“肛門”を意味するアラビア語からきているそうだ。
■小田高生からの報告
小田高生物部の部員は現在8人、1年次と2年次が各4人。春は文化祭の準備、夏は昆虫採集と標本つくり、冬は小田原白梅ライオンズクラブと早稲田大学の科学コンテストの発表準備に情熱をかけている。文化祭では酒匂川と早川の魚で釣り堀をつくり、来場者に愉しんで貰った。イカの解剖もやった。活動報告は遠藤京助君(2年生)が代表でおこなった。
【宇宙空間の実験と共に】
宇宙空間の実験に登場している綏歩動物クマムシ(隊長1ミリ未満、4つの脚)。小田高生物部は昨年に引き続きこの実験を行った。前回は乾眠(棲息環境が乾燥するとこうなる)からの復活だったが、今回は乾燥時間とその復活率の関係だ。
【クマムシの採集と実験パターン】
小田高周辺でのコケから採集したクマムシは、スタンドライトと簡易ベールマン装置で10匹を確保。第1回実験は、クマムシと水の入ったペトリ皿。これにシートかぶせたもの、かぶせないもの、シートに穴をあけたもの、あけないものまでの4パターン。シートをかぶせなかった皿のクマムシだけが乾燥から復活した。
【第2回以降は…】
こんどは主食のコケに水を加える量とその復活時間の実験。だがコケが邪魔をして実験は失敗。第3回目は最初の実験で成功したシートをかぶせない皿をベースに、水の量を3パターンにした。その量に応じての復活は確認できた。
【実験の結果報告】
乾燥時間と復活率との相関性の確認は出来なかった。来年は復活率が確認できるように再度チャレンジする積りだ。
(挨拶する津田同窓会長)
フォーラムの開幕に先立って、小田高同窓会の津田憲一郎会長(高20回)が、「私の住む山北町ではトリカブトの群生をよく見る。キノコ狩りも楽しい。今日はそれらの勉強をさせて戴き、フォーラムが更に充実するように」と挨拶をした。小田高の剱持雅章教頭(高30回)は「フォーラムが在校生と共に開かれることが嬉しい」と、学校側から期待を寄せた。フォーラムの司会は中山和也さん(高11回)が行った。
(挨拶する剱持雅章教頭)
ことし(平成29年)も自然環境フォーラムの季節がやってきた。開催は6月18日。会場は母校の集成館ホール。こどもと一緒の家族も姿を見せ話題豊富な催しとなった。講師陣には小田高が全国高校サッカーで全国準優勝した当時のキャプテンも…。
タイトルは『あなたは知っていますか?植物パワー』。さあ、その紹介です。

■トリカブトは「クスリ」です!?

【全国高校サッカー準優勝当時の主将】
「母校でまさか研究の話しをするなんて…」と感慨深げだ。川口さんは昭和26年、小田高が全国高校サッカーで準優勝したときの主将、FWだった。会場の関心はそのサッカーに…。
川口さんの講演が始まった。
【トリカブトはどんな植物?】
キンポウゲ科で、オダマキ、フクジュソウも同じ科目だ。南半球では発見されていない。日本では沖縄を除く全国に分布し40から50種はある。種芋(母根)、附子(ぶし、子根)、茎、枝、葉、花のどこにも毒がある。花弁のように見えるが実は萼(がく)。母根に付いた附子を特殊加工したのが生薬で、薬物のトリカブトだ。この植物に触れても大丈夫。川口さんはトリカブト畑で25年間も調査をしているが、中毒になったことはないという。
【松本清張の小説にも毒物として登場】
人気作家の松本清張はトリカブトの毒を扱った推理小説を書いている。沖縄県では実際に保険金目当てでトリカブト殺人事件が起きた。室町時代の狂言「附子ぶす」にもトリカブトが出て来る。現代にはいり秋田県の営林署で職員が蜂蜜を食べて食中毒になった。ミツバチがトリカブトの花粉(毒がある)を集めていたのが原因だった。
【クスリになるのは?】
トリカブトは西洋では毒薬につかわれることが多いが、東洋ではむしろ薬に使われてきた。減毒方法を早く見つけたからだ。三和生薬では最初は群馬や栃木県で、現在は北海道で栽培、そこで附子を原料に薬にしている。医療用附子製剤と生薬製剤だ。効能は神経症、関節リュウマチ、消化器系や婦人病、かぜ、糖尿病などだ。会場から「帯状疱疹で悩んでいる。その処方薬に?」と悲鳴のような質問が。「薬事法では農業研究者は病気の対処療法を話せない。漢方医に聞いて…」
【サッカー余談】
全国準優勝のことに質問が飛んだ。「ボクは勉強はしなかったが、サッカーの練習は必ずやった」と川口さん。「数学だけはできた。それで東北大に進めた」と。会場の在校生には真正面からのシュートのようだった。
■キノコ狩りは楽しいぞ!

【箱根・金時山登山では最年少記録】
酒井さんは生後8か月のとき、父親のリュックに入れられて金時山に行っている。「最年少の登山記録保持者です」と。大きくなって山頂の金時茶屋で当時の登山者名簿を探して貰った。だが残念!発見できなかった。この話からキノコ狩りへと展開した。
【キノコは植物なの?】
「キノコは菌です」、カビの仲間でもある。日本国内で約5千種、世界では6万種はあるだろうという。山にはキノコは一年中生えている。食用となると夏から秋にかけてが最盛期だ。キノコは自由に採っていいのか。やはり山の持ち主に断った方がいい。入山鑑札券などがあればそれを使う。採集ルールを守ろうと酒井さんは言う。
【さあ、キノコ狩りの始まりです】

会場のスクリーンに投影されたのは、まずタマゴタケ。傘が赤く毒キノコのようだが食用。美味で仏料理の食材だ。日本TVの新日曜ドラマ『フランケンシュタインの恋』のバックに映るベニテングタケは、童話の世界をつくり出すが、れっきとした毒キノコ。キヌガサダケはレースを羽織っている。中華料理では最高級食材だ。朝早く出て夕方に萎んでしまう。

【初心者向けのキノコ】
人気があるのがハナイグチ。直ぐ見つかる。ぬめりがあるがこれが美味。大根おろしやキノコ汁で食べれば申し分なし。夏のキノコの代表格がチチタケ。北関東の人たちはよく食べている。
【TV局はキノコ大好き?】
イタリアではボルチーニと言われるヤマドリタケは、フジTVのドラマ『貴族探偵』の第1話に登場。なじみの薄いキノコだが、非常に美味。酒井さんの密かな楽しみだそうだ。NHKの朝ドラ『ごちそうさん』ではクロカワが登場。俳優近藤正臣が料理好きの父親役で調理して見せた。酒井さんは「TV局のディレクターの間では、キノコは密かなブームかな?」と推察していた。
【森の少年少女合唱団…】
酒井さんが撮るキノコの美しい姿や珍しい写真。小田高同窓会報『八幡山』やこのHPでご紹介できないのは残念だが、個展の企画もありそう、その機会にぜひ見て戴きたい。
食べられないキノコの一つセンボンクズタケの姿はきれい。「私は森の少年少女合唱団と言っているんです」と酒井さん。「山ではキノコに逢う愉しみがある。でも夢中になると方向感を失い迷子になる。ご注意を」と警鐘をならす。この日紹介されたのは40種類。木の上に付いている珍しいキノコ、人間の頭ほどもある大型のオオモミタケ、生の珍品キクラゲ、ブナ林で採れるブナハリタケ、杉林で採れるスギヒラタケなども登場した。
【箱根に現れた猛毒のキノコ】
最近、箱根・仙石原で見つかったのが猛毒のカエンダケ。手が触れただけでも火傷をする厄介なヤツだ。
【毒かどうかの見分け方は?】
酒井さんは断言する。「見分ける方程式はありません。ひとつひとつ覚えるしかないでしょう。迷信のたぐいは信じないように」と。
■機能性野菜の科学

【アンデスの畑では】
機能性野菜は南米アンデス、中央アジア、熱帯のアジア、地中海沿岸、アフリカなど各地で見られる。アンデスの野菜ではまずムラサキトウモロコシ、大腸がんの予防作用がある。ペルーで話題になるのはカブの一種マカ。アブラナ科の植物で、貴重な滋養強壮剤である。このエキスは筋肉痛、凍傷、養毛剤に使われる。
【日本とのかかわり】
ラッカセイも原産地は南米大陸だ。薬としてペルーからメキシコに伝わり脂肪酸が豊かな食材である。ジャガイモは、やけどや湿疹にも使われる。ドイツのフリードリッヒⅠ世は食用として普及させた。日本にはオランダ交易で運ばれてきたが、明治時代には英国から川田龍吉男爵が持ち込み、それが男爵薯となった。トウガラシは豊臣秀吉の海外遠征で朝鮮半島に持ち込みキムチ漬に使われるようになった。
【中央アジアでは】
ニンニク、タマネギなどが挙げられる。ニンニクは血圧降下作用、動脈硬化症の軽減作用がある。タマネギは動脈硬化の予防効果、胃弱や便秘にもいい。タマネギに含まれるアリシンは血液改善効果が期待される。調理中に涙が出るのはアリシンによるもので、硫化アリルが催涙作用になるからだ。
【熱帯アジアの野菜】
まずショウガ。かぜや腰痛、食欲減退などの症状には必要な食材だ。健胃薬にもなる。ショウガがもつ殺菌効果で、刺身などのなま物の食材に沿えてつかわれる。このほかレンコン、ゴーヤそれにコメも機能性野菜である。
【キャベツやレタスは地中海沿岸から】
キャベツは古代ギリシャでは薬用、古代ローマでも保健食だった。内臓の胃壁や腸壁のただれの修復作用がある。胃の不調にはキャベツをバリバリ食べる人がいる。キャベツはケルト人が野生の植物ケールを改良した。葉は結球してキャベツに、花がブロッコリーとカリフラワーに。生活習慣病の予防にいい。レタスは古代エジプトに記録がある。日本には平安時代に中国を経て入ってきた。美肌効果と動脈硬化の予防になる。
【アフリカの野菜、余話】
ゴマはスーダン東部が原産地。日本では縄文時代の出土記録があり、奈良時代には畑で栽培されていた。ゴマ油は食用と灯油用だ。アラビアンナイトの「開け!ゴマ」は“肛門”を意味するアラビア語からきているそうだ。
■小田高生からの報告

【宇宙空間の実験と共に】
宇宙空間の実験に登場している綏歩動物クマムシ(隊長1ミリ未満、4つの脚)。小田高生物部は昨年に引き続きこの実験を行った。前回は乾眠(棲息環境が乾燥するとこうなる)からの復活だったが、今回は乾燥時間とその復活率の関係だ。
【クマムシの採集と実験パターン】
小田高周辺でのコケから採集したクマムシは、スタンドライトと簡易ベールマン装置で10匹を確保。第1回実験は、クマムシと水の入ったペトリ皿。これにシートかぶせたもの、かぶせないもの、シートに穴をあけたもの、あけないものまでの4パターン。シートをかぶせなかった皿のクマムシだけが乾燥から復活した。
【第2回以降は…】
こんどは主食のコケに水を加える量とその復活時間の実験。だがコケが邪魔をして実験は失敗。第3回目は最初の実験で成功したシートをかぶせない皿をベースに、水の量を3パターンにした。その量に応じての復活は確認できた。
【実験の結果報告】
乾燥時間と復活率との相関性の確認は出来なかった。来年は復活率が確認できるように再度チャレンジする積りだ。

フォーラムの開幕に先立って、小田高同窓会の津田憲一郎会長(高20回)が、「私の住む山北町ではトリカブトの群生をよく見る。キノコ狩りも楽しい。今日はそれらの勉強をさせて戴き、フォーラムが更に充実するように」と挨拶をした。小田高の剱持雅章教頭(高30回)は「フォーラムが在校生と共に開かれることが嬉しい」と、学校側から期待を寄せた。フォーラムの司会は中山和也さん(高11回)が行った。

生物部OB会(会長、牧林 功=高4回)
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